
■ 胃潰瘍(いかいよう)とは?
胃潰瘍(いかいよう)は、胃の病気の中でもかなり強い痛みを伴う病気です。意外に思われるかもしれませんが、胃潰瘍がピーク時にあった1980年代中頃までは、毎年60万人以上の人たちが胃潰瘍に苦しんでいました。
しかし、すでに胃潰瘍の治療法が確立されていますので、大幅に減少しています。ちなみに2011年の時点で胃潰瘍の患者の数は、約30万人にまで減少しています。
現状ではこうした状況にあるにもかかわらず依然として胃潰瘍に関して間違った認識が広がっているため、単なる胃痛程度くらいに考えている方が少なくありません。市販薬を飲み続けても痛みが治まらないことから、慌てて医療機関を受診することになります。

『 胃潰瘍から胃がんに発展することはない? 』
胃がんと胃潰瘍は発生しやすい場所が同じであることから、胃潰瘍だと思っていたら、実は胃がんだったという例が少なくないので注意が必要です。
また、反対に胃潰瘍が進行すると胃がんになると思われる方も少なくないため、過剰に神経質になって、これが大きなストレスとなるケースも多いです。しかし、胃潰瘍は胃がんの原因ではありません。
ですので、変な思い込みから余計なストレスを抱え込んで日常生活に支障を来さないためにも早い段階で医療機関を受診されることをオススメします。

■ 胃潰瘍の原因とは?
胃潰瘍を発症しやすいのは40代から50代のいわゆる中高年の世代です。一方、十二指腸潰瘍は、20代から30代の若い世代に多く見られます。十二指腸潰瘍は、胃のはじにある「十二指腸球部」で発症しやすいとされています。
それに対して胃潰瘍は、胃の「胃底腺」とよばれる領域と「幽門腺」と呼ばれる二つの領域があり、幽門腺側に圧倒的に胃潰瘍ができやすいとされています。
これには確かな理由があります。基本的に胃底腺は、主に消化を担う領域であるため、胃底腺領域を自らの力で守る働きが元来備わっているんです。

『 胃潰瘍の主な原因は「ピロリ菌」 』
このため胃潰瘍になりにくいとされているわけですが、それに対して幽門腺側にはそういった機能がないため、自らを防御することが出来ません。
このため幽門腺側は、胃潰瘍になりやすいわけですが、胃潰瘍の主な原因は、ピロリ菌、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、これにストレスが加わる格好です。ですので、ストレスが胃潰瘍の直接的原因ではありません。

■ 胃潰瘍の症状とは?
胃潰瘍の主な症状は腹痛を筆頭に、背中の痛み、食欲不振、下血などです。健康診断で偶然「胃潰瘍」が見つかっても、全く症状のない場合も少なくありません。
また、胃潰瘍の合併症についてですが、出血と穿孔があるのですが、症状が見られたら、できるだけ早い段階で専門医による胃潰瘍の治療が必要となります。
なぜ中高年のほうが若年層よりも胃潰瘍になりやすいのかといえば、加齢が進むにつれて胃底腺の領域を狭める格好で幽門腺の領域が拡大するからです。

■ 胃潰瘍の治療について
胃潰瘍の治療は、薬物療法と食事療法が基本となります。詳細は以下のとおりです。
(1)薬物療法
主に「H 2ブロッカー・プロトンポンプ阻害薬」と「プロスタグランジン製剤」の二つのお薬が使われます。前者は胃酸の分泌を抑え、後者は粘膜を守る作用を強めるお薬です。
基本的に胃潰瘍は薬で大抵治癒しますが、以前は薬の服用を中止すると再発してました。しかし、近年ではピロリ菌が胃潰瘍の原因の大半を占めていることが明らかになったため、「除菌治療」によって胃潰瘍の再発リスクが大幅に減少しています。
(2)食事療法
お薬が進化したことによって、以前のような厳しくて味気ない食事制限は必要ありません。しかし、不摂生な食生活やストレス、過度な飲酒には要注意です。
次第に胃粘膜の抵抗力を低下させ、胃潰瘍の発症リスクが高まります。胃潰瘍の治療と再発防止には食事療法や規則正しい生活が特に重要です。
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